THE WEDDING PRESENT (2004-NOW)    - DISCOGRAPHY -
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Locked Down & Stripped Back

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Locked Down And Stripped Back

FORMAT: LP
RELEASE DATE:
26th Feburary, 2021 (U.K./Europe/U.S.)
LABEL / CATALOGUE No:
Scopitones (U.K./Europe) - TONE088X (Orange Clear Vinyl LP&CD/Limited Edition) / TONE 088 (Black LP&CD) / TONE CD 088 (CD)
Happy Happy Birthday To Me Records (U.S./Canada) - HHBTM 210 (LP w/ download code)

Tracklisting:
  1. A Million Miles (George Best 1987)
  2. California (The Hit Parade 1992)
  3. Starry Eyed (Torino 2002)
  4. We Should Be Together ft. Louise Wener (previously unreleased / Sleeper's cover)
  5. You Should Always Keep In Touch With Your Friends (7" single 1986)
  6. Granadaland (Bizarro 1989)
  7. You're Just a Habit That I'm Trying to Break (previously unreleased / new song 2020)
  8. Crawl (3 song EP 1990)
  9. Sports Car (Mini 1995)
  10. Deer Caught In the Headlights (Valentina 2012)
  11. Blonde (Seamonsters 1991)
  12. My Favourite Dress (George Best 1987)
PERSONNEL:
David Gedge : Vocals, Guitars and Keyboards
Jon Stewart: Guitars except # 3,4,9 & 11
Terry De Castro: Guitars and Backing Vocals on # 3,4,9 & 11
Melanie Howard : Bass, Vocals, Guitars and Keyboards
Chris Hardwick : Drums
Louise Weiner : Vocals on "We Should Be Together"
【解説】
 本来であれば、2020年という年は、ここ数年の夏季オリンピックの開催年にオリジナルのスタジオ作が発表されてきたペースで行けば、2006年の『Going, Going...』に続くスタジオ・アルバムがリリースされる年になったかもしれなかった。すでにライヴでは順調に新曲も披露され、新たにSleeperのメンバーとしても活動するJon Stewartをギターリストに、My Life StoryからChris Hardwickをドラマーに迎えたライヴも好評で、まさに機は熟していた、と誰しもが思っていた。しかし、ファンの仄かな期待を打ち砕いただけではなく、全世界の音楽ファンや音楽産業に携わるあらゆる関係者に大打撃を与える出来事が起こったのはご存知の通り。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な大流行であった。
 ザ・ウェディング・プレゼント(以下TWP)も他の多くのバンド同様に、その影響を被ることになった。予定されていたライヴは悉く延期または中止の憂き目に遭った。イングランド国内の最初のロックダウンの最中にあって、2020年の前半は各メンバーが同じ場所に集まることさえできず、当然スタジオ・アルバムの制作など不可能な状態に陥った。
 そんな中にあっても、デイヴィッド・ゲッジは同じ様に苦境に陥っているだろう全世界のファンに向けた娯楽を提供し続けた。自身のSNSアカウントでの頻繁な発信(過去のアルバムをサッカーのチームに見立てた投票などユニークな企画も)はもちろん、公式YouTubeチャンネルWedding PresentTVの復活、そのチャンネルも活用して自宅から3度のオンライン・イベントの開催、毎夏地元ブライトンで開催していたフェスティヴァル"At the Edge of the Sea"はオンライン版のフェス"At The Edge Of The Sofa"として、多数の現/元メンバーたちのバンド、ユニットをはじめ、過去に同フェスに出演してきた数々のバンド、アーティストたちが自宅で録り下ろしたセッション映像を提供し、2日間にわたって開催。さらにイングランド国内での感染状況が一旦落ち着いてロックダウンが解除されていた10月10日には初の有償でのオンライン・ライヴ中継を実施。フル・バンド編成では9ヶ月ぶりとなったライヴに多くのファンが快哉を叫んだ。もちろんこのロックダウン中にクラウドファンディングでアルバムの制作を実現させ、初のソロ・アルバムにして大傑作『Carousel』をものにしたSuch Small Handsことベース&バック・ヴォーカルのMelanie Howardの活動も忘れることはできない。

 そんなオンラインを中心とした活動の中でも特に評判を得たのが、公式YouTubeチャンネルで続々公開された"Locked Down & Stripped Back"と題された現在のバンドメンバー4人と盟友のTerry de Castroが、ロックダウン中だったそれぞれの自宅で録音・撮影したセミアクースティック編成によるヴァーチャル(リモート)・セッション・シリーズ。6月2日に公開された"Granadaland"を皮切りに、"Crawl"など過去のTWP/CINERAMA楽曲のセルフ・カヴァー/リ・ワークをはじめ、Jon Stewart加入後のツアーで初演奏されたSleeperの未発表曲"We Should Be Together"はそのSleeperのボーカル、Louise Wenerとのデュエットで披露。さらに現在のメンバーになってから初の共作曲となった新曲"You're Just a Habit That I'm Trying to Break"など、断続的に公開されてきた全12曲。いずれも、とてもバラバラに録られたものとは思えないくらい、TWPならではの絶品のバンド・グルーヴが感じられる雰囲気がとにかく素晴らしく、すぐに多くのファンからフィジカル化の要望が上がった。そんな大多数のリクエストに応えたのが本カタログというわけである。
 フィジカル盤はCDが同梱されたヴァイナルLP盤が2タイプとCD盤のみの計3種類。ここ最近のScopitonesからのリリース作品『George Best 30』『Tommy 30』と同様に、ヴァイナル盤は通常のブラックLPに加え、インディーズ・ショップ限定販売仕様のものが用意されており、今回は透明ネオン・オレンジのカラーヴァイナルとなった。毎回様々なデラックス・エディションをリリースしている北米アセンズのHappy Happy Birthday To Meからも発売され、北米版のみのカセット盤も用意された。

 先に公開された映像版でも伝わって来た自宅録音ならではのリラックスした空気感はこの音声版でも十分に味わえ、春めいてきた陽気の中で散歩しながら聴きたくなる冒頭の"A Million Miles"に顕著だが、コロナ禍で疲弊したこの時代に聴くには格好の癒しになる感覚が個人的にはある。

 まずは何と言っても、前述の2曲の新曲だろう。元々はSleeperが20年前に録音していた未発表曲だった"We Should Be Together"。Jon Stewart加入後のツアーでライヴのレパートリーとして初披露され、ライヴではDavid Gedgeと現在のベース/バック・ヴォーカルであるMelanie Howardのデュエットで演奏されていたが、ここでは本家本元のSleeperのLouise Wenerをフィーチャー。そのLouiseが公式Twitterで明かした逸話として「元々は(アルバムのプロデューサーだった)Stephen Streetの40回目の誕生日パーティーの後に書かれたもので、歌詞の"Where do you belong, when the grey skies turn you on...."のラインはその時に交わしたTerry Hallとの会話にインスパイアされたもの」とのこと。なぜ当時お蔵入りしてしまったのか理解に苦しむほどシングル・ヒット向きのナンバーで、Sleeper版はこのアルバムに先んじて2020年12月にリリースされた『This Time Tomorrow(The Lost Album)』でようやく陽の目を見たが、ファンの贔屓の引き倒しではあるが、もはやTWPのレパートリーとして定着させた方が良いのでは?と思わせるぐらい、このデュエット版は本当にハマっている。"You're Just a Habit That I'm Trying to Break"もシングル向きのポップさが際立っているが、前述した2020年10月10日のオンライン・ライヴでは後半のアレンジが刷新され、エレクトリック・バンド編成ならではのノイジーなバンド・アレンジに思わず唸わされた。これはスタジオ録音版が楽しみな1曲だ。
 そして過去の楽曲を文字通り骨組みだけを残し、セミ・アクースティック編成に合わせてアレンジを刷新したナンバーも聴きどころ。軽やかなポップ・チューンに生まれ変わったかのような"Granadaland"や、Terry de Castroのソロ作『A Casa Verde』でのカヴァーのアレンジを踏襲したかの様なCinerama時代の名曲"Starry Eyed"、アクースティック・ギター2本の伴奏のみで歌われる"Blonde"はMelanie Howardのソロ・ユニットSuch Small Hands寄りの静謐な佇まいに息を飲む。Melanieは“Sports Car"でリード・ヴォーカルを取っているが、1997年1月のシングル"Montreal"のカップリングで発表されたJayne Lockeyによるウィスパリング・ヴォイスが特徴的なアクースティック版ともまた趣が異なる出来で、艶やかな彼女のヴォーカルが素晴らしい。一方で、元々アレンジも込みで完成されていた"Crawl"や"California"あたりはあれ以上手を加える必要も無かったのだろう。原曲そのままのアレンジでセルフ・カヴァーされている。ちなみにアルバム・ジャケットには度々映像中にも登場していたDavidの愛犬Dorisが描かれている。
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