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Va Va Voom 25
TITLE: Va Va Voom 25

RELEASE DATE:
December 13th, 2024 (U.K./Europe)
LABEL / CATALOGUE No:
Clue Records (U.K./Europe) - CLUE119(Deluxe Edition double color vinyl,2CD&DVD), CLUE119PD(ltd. edition Picture disc LP), CLUE119CD(double CD&DVD)

収録曲目(Tracklisting)  


Personnel:
Sides A + B and CD 1

David Gedge: singing and electric & acoustic guitars
Terry de Castro: electric guitar and narration
Melanie Howard: bass
Nicholas Wellauer: drums and tambourine
Aegli Issaias: keyboards
Emilie Geissmar-Wagstaff: flute and singing
Rachael Wood: singing
Gabija Kasiliauskaitė: violin
Michael Simmonds: violin and viola
Robin Squirrell: cello
Andrea Parker: guest vocals on ‘Ears’
Recorded – in 2023 & 2024 at Metway Studio [Brighton, England] – and mixed by Tobias May

Sides C + D and CD 2 + DVD

David Gedge: singing and tambourine
Terry de Castro: electric guitar and narration
Rachael Wood: acoustic guitar and singing
Melanie Howard: bass and singing
Nicholas Wellauer: drums
Aegli Issaias: keyboards
Emilie Geissmar-Wagstaff: flute and singing
Robin Squirrell: cello and singing

Recorded – in 2023 at Concorde 2 [Brighton, England] – and mixed by David Coyle


作品概要/解説  

 ザ・ウェディング・プレゼント(以下TWP)が1997年1月に一旦活動休止以降、David Gedgeにとって最初の活動となったのが、当時のパートナーだったSally Murrellと組んだユニット、シネラマ(Cinerama)だった。自ら“ワイド・スクリーン・ポップス”と評して、敬愛するジョン・バリーなどの映画音楽、バート・バカラックやセルジュ・ゲンズブール、ABBAなどのユーロ・ポップスも含めた、幅広いポップ音楽愛好家としての愛を自身の音楽に注ぎ込んだのが、1998年7月に発表された『Va Va Voom』。その後この名義ではTWP同様のギター・バンド編成に回帰しながら2枚のスタジオ・アルバムと数多くのシングルやそれらをまとめたコンピレーションの発表と並行し、精力的なライヴ・サーキットが行われ、結果2004年まで6年あまり活動が本格化することになったが、文字通りの意味としての“ソロ・アルバム”がこの『Va Va Voom』であったと改めて思う。TWP時代も含め、必ずバンド内メンバーとの共作を基本としており(初期楽曲においては出版社契約の都合でGedge一人のクレジットとなっていたが、著作権印税は等しく当時のメンバーに分配しているのは今となっては有名な話)、その時代その時代のラインナップにおけるメンバー間の化学反応も作品に如実に反映されている部分も多いが、本作ではDavid Gedge1人で全ての作詞作曲を手掛けていて、また当初は自宅の作業環境が整った影響から、バックトラックの大半をラップトップPC上の打ち込みで制作を進めていた経緯もあり(しかし、最終的にはセッション・ミュージシャンの演奏に差し替えられた)、それが却って“ソロ・アルバム”としての性格を強めていた=あくまでTWPとは別の位相にある作品であると、多くのファンに印象付けていた面があった。
 実際、音楽的に見ると1994年作『Watusi』以降その萌芽を見せていたポップで柔和な方向性が全面開花しているとも言え、リードオフ・シングルとなった"Kerry Kerry"を筆頭に、セカンド・カットにもなった妄想恋愛爆発の"Dance, Girl, Dance"(今聴いても大瀧詠一の『A Long Vacation』収録曲の様な雰囲気の、非常に純度の高いポップ・ソングだ)、マリンバの音色がキャッチーなのにものすごい暗い歌詞の"Hate"、The DelgadosのEmma Pollockとのデュエットで淫靡な歌詞も印象的なストーキング・ソング"Ears"、そして極めつけはDavidの個人的趣味が爆発したといえる、まるでユーロビジョン・ソング・コンテスト(欧州放送連合加盟放送局によって開催される、毎年恒例の音楽コンテストで、David Gedgeの公式SNSアカウントで実況中継のように感想を綴ることがあるくらいの昔からのファンとして知られる)出場アーティストが歌いそうな叙情的な"Hard, Fast & Beautiful"など、おおよそTWP名義では発表されなかったであろう軽やかなソフト・ポップなサウンドがアルバム全編を貫いている。当時流行りだったとは言え、実際に相当意識していたと思われるThe Divine Comedy、RialtoやSpaceなど、同時代のいわゆるブリットポップ勢の作品でもよく耳にしていた、今となってはチープなストリングス・シンセが多用されているのもまた、いかにも“ソロ・アルバム”っぽい受け止め方をされたのであった。

 多くのTWPファンも同様だったろうが、これはあくまで本体のバンドが活動休止期間中の息抜き的な活動と思っていたので、またすぐにでもTWPとしての活動が再開されるのであろうと期待させるには十分であったし、その素直すぎる良質さは1998年のまだブリットポップの勢いがあった時代においてもやや異色ではあったが、一人のシンガー・ソングライターの初陣として非常に好意的に受け入れたものだった。
 まさか当時、この名義での活動がさらに6年も継続され、2枚のスタジオ作までもが制作されるとは思いもしなかったわけで、その過程で新たなソングライティングの方向性を模索しつつ、かつてのTWPと同じ編成でありながら、また更に進化を遂げたギター・バンド・サウンドをSteve Albiniとの再タッグによって獲得したり、結局最終的には同じCineramaのメンバーのまま、突然2004年にThe Wedding Presentの屋号を引き継ぐような形で、現在のTWPが始まっている。
 いずれにしても、発表から四半世紀を経て、今やCinerama名義での活動が、現在のTWPへの階としていかに重要な役割を果たしていた期間だったのかが明確になっている現在の方が、本作への正当な評価が定まっているとも言える。David Gedgeのキャリア上でも屈指の名曲群・・・先に挙げた曲以外にも、アルバムの中では地味なポジションな"You Turn Me On"は新生TWPのステージでは何度か取り上げられているが、本作の中では"Honey Rider"と合わせ、カルテットのギター・バンド・アンサンブルによく合う名曲だが、“最高の失恋アルバムの1つ”とも評価する向きもあるくらいのストーリーテラーとしての魅力も十分に楽しめる作品集だと思う。

 そんなアルバムを発売25周年を記念して全編再現する企画が、毎夏8月に現在のDavidの地元英ブライトンで開催されている音楽フェスティバル「At The Edge of The Sea」の2023年開催回のCineramaのステージで実現することになり、Cinerama時代でも苦楽を共にしたTerry de Castro、2022年の月刊シングル・シリーズ『24 Songs』プロジェクトで活躍したMelanie HowardとNicholas Wellauerのリズム隊(夫婦でもあり、このフェスティヴァル後の2023年10月に揃って脱退)、そして現在のTWPのギターであるRachael Woodと新旧のTWPメンバーに加え、サポートのストリングス、フルート奏者も配した総勢8名編成の生バンドで、同作を曲順通りにライヴで実演。オンラインでも中継されたその様子から伝わってきたのは、やはり生バンドの演奏が本作に新たな息吹を吹き込んでいるのが明らかなもので、ボーカリストに徹したDavidの充実した歌唱も聴きどころで、同フェスの中でも一際ハイライトと呼びたい素晴らしい出来栄えだった。その模様は今回のボーナスDVDにもそのまま収められているが、これに手応えを感じたDavidは、フェス終了後に素早くレコーディング・スタジオをブッキングし、スタジオ録音の新作として本作品を記録することになった。

 周年を記念した再録音作といえば、TWPとしての『George Best 30』、『Tommy 30』があったが、同様の企画として本作は位置づけられるのだろう。そしてその成果は前述の『George Best 30』同様に、ステージでの実演に向いた編成(そう、TWPのデビュー作であった『George Best』も実はドラムパートはシンクラヴィアに落とし込んだ音源をプログラミングして鳴らされていたし、かなりのオーバーダビングが為されていたことが後年明らかになっている)で演奏され直されたことで、本来のその楽曲群が持っていた本質的な響きを取り戻し、新たな生命力を放つようになった感覚が強く顕れている。
 それにしても、正直耳にするまではあまり期待していなかったのが率直なところだったのだが、聴いてみてその出来上がりに心底驚いてしまったのだ。そうだよ、『Va Va Voom』は本来、こう鳴らされるべきアルバムだったのではないか、と。25年の時を経た最適解がここに示されている、そんな気がしてならない。
 それぞれの楽曲の基本的なアレンジこそ同じだが、チープなストリングス・シンセは取り除かれて、以前はサンプラーで鳴らされていたストリングス・パートは生演奏に置き換えられているし、マリンバのパートはセミ・アコギターに変更と細かい楽器の変更も為されていたり、あとからセッション・ミュージシャンの演奏を被せたのではなく、本来意図する形でミュージシャンが配されて、楽想的に明確な着地点が見えている中、十分なリハーサルを経た上で演奏されているのだから、当然得られるべくして得られた成果に結びついている。そして何と言ってもオリジナル『Va Va Voom』との最大の差異は、何度でも言うが、近年ヴォーカリストとしても益々魅力的なDavid Gedgeの歌だろう。表情豊かに歌われる、元々の歌詞世界に寄り添ったその歌唱表現が、本作を単なる昔の何かをなぞっただけの再録音作に終わらせない大きな強みにもなっている。
 オリジナル版を知る方も、ぜひとも本作に耳を傾けて欲しい。サブスクリプション・サービスで全編気軽に聞けるようになった現代でも、相変わらずフィジカル・リリースには手抜かりなく、今回も装丁が魅力的な複数のフォーマットが用意されている。Cinerama名義では初となったピクチャーディスク仕様のアナログ盤もいいが、やはりオススメは再録音版とライヴ版をセットにした2LP+2CD+DVDのデラックス・セット(ジャケットの体裁が本当に素晴らしいので、これは手にとって欲しい)になるだろう。ただ、どのフォーマットも生産数が少なすぎるのか、なかなか通信販売でも日本に入って来ないのが本当に勿体ない。そう言えば同レーベルからの『24 Songs : The Album』や『Live 1994』がパートナー企業のメジャー・レーベルEMI Northからのリリースだったのが、今回は完全にClue Recordsとしてのインディー・ベースでのリリースになっているのも無関係ではないのだろう。ここは送料がかかってでも、直接Bandcampから購入することをオススメしたい。

外部リンク  

(first published : 14th February, 2025)

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First published on the internet in February 1998